私たちは40代の夫婦です。
夫は普段、面倒くさがりでだらしない人です。
お世辞にも”頼れる夫”とは言いがたいのですが、結婚してから1度だけ夫に惚れ直した出来事があります。
たった1度のことでしたが、それ以来、私は夫の見る目が変わりました。
今回は、その当時のエピソードをご紹介したいと思います。
それは、私が勤務先から帰宅する際に起きた出来事でした。
ちょうどその時に雨が降り出し始めました。
傘を持たずに出掛けたので止んでくれたら良かったのですが、願いは叶わず土砂降りになりました。
傘を持っていなかった私は、たまたまその日に仕事が休みだった夫に電話をして最寄り駅まで車で迎えに来てもらうことにしたのです。
電話してから間もなく夫は、車で駅の改札前まで迎えに来てくれました。
そのまま自宅へ向かう途中のことでした。
突然、夫が車を停めて豪雨の中、傘も差さずに血相を変えて外へ走り出して行ったのです。
突然の出来事に驚いて窓の外を見ると、歩道に人が倒れていました。
夫はその人に駆け寄り容態を確かめ、身体を抱えて雨の当たらない軒下に移動させたのです。
倒れている人は意識はあるようですが、自分では身体を起こすことは難しいようでした。
夫はすぐに携帯電話を取りだして救急車を呼んだのです。
日頃の「だらしない夫」と「機敏で的確な行動をした夫」
夫は医療従事者ではなく、救急対処法のスキルがあるわけでもありません。
それに普段の夫は面倒くさいことが大嫌いな人です。
下に落とした物を拾うのに「かがんで手で拾い上げるのが面倒だ」と言って、足の指でつまんで持ち上げるようなだらしない人なのです。
そんな夫が倒れている人を発見してから救急要請をするまでの動きは、私から見ても惚れ惚れするものでした。
自分の判断に自信をもった行動に見えましたし、人を救おうとずぶ濡れになりながら必死になっている夫の姿は格好良かったです。
もしかして、私の知っている夫の姿は仮の姿だったのかな!?
とすら思うほどの変貌ぶりでした。
自分の知らない夫の内面があることに気付く
結婚して10年以上経つので、夫のことなら何でも知っていると思い込んでいました。
ですが、私の知らない内面を夫が持っていることに気付かされました。
まして普段の夫は雨に濡れることを極端に嫌がり、雨の日は外出を控えるような人なので余計にビックリしています。
豪雨の中で傘も差さずに走り出した姿には呆気にとられました。
いま思えば、こうした他人の危機的状況に夫婦で遭遇したことがありませんでした。
後日、夫に今回の話を聞いたんです。
「なぜ助けようと思ったのか?」
当時の心境など聴こうと思ったのですが、
「気がついたら車の外に走り出していた。何にも考えてなかった。」
という言葉に再びビックリしたのです。
本当に損得勘定ぬきで体が反応したことが分かり改めて感心しました。
「やれやれと思って車内に戻ったら、濡れた服が気持ち悪くて嫌だった」
と言っていたので
「あんな土砂降りだったんだから当たり前でしょ!?」
とすぐに突っ込みましたが、そんなやり取りも夫を見直した後では心地良く感じました。
あの時は、周囲に救助してくれるような人が誰もいない状況だったので、もし誰か近くにいたら夫が雨の中へ駆け出すことはなかったかもしれません。
その後、こうした状況に遭遇することはありませんが、あの時は夫を
“いざと言う時は頼もしい人”
と見直して見る目が変ったのです。
その後ですか?
まただらしない夫に戻ってしまいました(笑)