精神科医の樺沢紫苑氏の著書である『アウトプット大全』を読んだ。
同氏は精神科医であり、また月に20冊以上の読書を30年以上継続している大変な読書家でもある。
ちなみに本書の前に発刊した「読んだら忘れない読書術」は15万部のベストセラーにもなっている。
筆者は冒頭の本に出逢うまでは”ひたすら本を読んでは内容を忘れていく“という愚行をひたすら繰り返してきた。
当時は、毎月本屋に行って新刊本をあさり一度に最低でも3~5冊買っていたし、さらに最寄りの図書館で上限の10冊まで片っ端から借りて読んでいた。
一人一人に聞いたワケではないが、おそらくまわりの同年代の人たちよりは「読書量」の点では勝っていたように思えた。
しかし「質」の部分では自分は人よりも劣っていた。
いざ読む時になると内容がなかなか頭に入ってこないのだ。
自分に苦手な分野だったり、興味関心がない分野なら余計にだ。
それならばとゆっくり時間をかけて読んだり、声を出して読んだりもしてみるのだが、それでも一向にはかどらない。
「2度3度と繰り返し読めば頭に入るだろう」と考えて実行したが、1週間もすればほとんど内容なんて覚えてもいない。
とにかく忘れるのだ。
今まで読書に使った時間や労力、お金は無駄だったのだろうか?
「自分の将来」や「自分への投資」などは考えず、他の人のように趣味や旅行など楽しくてワクワクするような事に時間を割いた方が賢い生き方なのだろうか?
そんなことまで考えた。
その時はすっかり卑屈になり、筆者が幼い頃に「たくさん本を読めば頭が良くなる」と言った周りの大人達に対してまでもその感情を向けたりもした。
しかし、この本を読んでから人生が変わった。
決して大袈裟な表現ではない。
同書はビジネス書であるが、その効果は「勉強」や「仕事」にとどまらず、生活全般どんな事にも応用が効く万能書と言える。
とくに筆者が大きく変わったのは対人関係だった。
それまでの筆者は、他人から凄く嫌われることもない代わりに、特別好かれることもないよう存在感のない人間だった。
それが「自分の強み」ができてから自分に自信がもてるようになり、人と話す時も相手の目を見るようになり、話す話題もどんどん増えていった。
別に特別なことや難しいことをやったワケでは無い。
ただ本書に書かれていた事を実践しただけだ。
その内の1つは、毎朝「ToDoリスト」を作ったことだ。
朝起きて余計な情報が入らず頭がフラットなうちに、その日のスケジュールを作り実行していった。
それまでの仕事ぶりと比べて、はるかに効率が良くなって質も量も驚くほど変わって行った。
もちろん失敗もそれなりにしたが、やればやるほど高揚感が増しエネルギーが内側から湧いてくる感覚がとても快感になった。
「やる気がないから行動しない」のではなく、「行動するからやる気が出る」という意味が今ならよく分かる。
今までの読書法が全て間違いだったわけではないだろうが、大事なのはインプットよりもアウトプットなのだ。
それが実感として身に染みた今の自分には、目の前の景色の見え方がこれまでと全く違う。
自分の未来に明るい光が差したような気持ちだ。
とはいえ、自分と他人は違う人間だ。
良書であるのは間違いないだろうが、同じ本でも感じ方はきっとそれぞれだろう。
万人受けする本なのか自分には判断できないが、自分の人生を変えてくれた本であることは確かだ。
筆者と同じように、それまでの自分を変えることができた人がいるならこんなに嬉しいことはない。