奥さんが毎朝、一生懸命に作って夫に持たせてくれるお弁当を、夫が食べずに捨てていたとしたら奥さんはどう思うでしょうか?
筆者の会社の同僚にそんな後輩がいます。
最初にその場面を目の当たりにした時は衝撃でした。
筆者は独身の身分なので、後輩が弁当を開けているのを見て
(ああ、愛妻弁当か…羨ましいな)
と思いながら、出勤前にコンビニで買ったパンをボソボソと食べていました。
その後、数分もしないうちに弁当の蓋を閉める音がしたので、
(もう食ったのか?)
彼の方を見ると、なんと弁当の中身を足下のビニール袋に捨てていたのです。
「え~!?お前何してんの!?」
ビックリして声が出てしまいました。
「いや、嫁の弁当がマズいんすよ…」
バツの悪そうな顔をしていたので、良くない事だと言うのは分かっているようですが…。
いくら口に合わなくとも、せっかく作ってくれた奥さんに悪いし食べ物を粗末にすんなよ!
と怒ったのですが、彼にも色々と事情はあるようです。
彼は20代でまだ結婚2年目なので、幸せな生活を満喫していると思っていただけにショックでした。
(俺なんかバツイチで40歳過ぎて孤独死を覚悟しているというのに、弁当が口に合わないくらいで何て我が儘な…)
そう思わずにはいられません。
元々、彼は独身時代から肉や揚げ物が好きなので高カロリー飯を好んで食べていました。
結婚してからは奥さんが、体に悪いから、と身体を気遣って野菜を中心としたお弁当を毎日持たせてくれています。
(確かに、今までの食生活から比べればギャップが大きいだろうけど)
筆者も高カロリー飯が大好きなので彼の気持ちも分からなくはないですが、しかし、それにしても《愛妻弁当を捨てる》のは衝撃でした。
笑顔が可愛らしくて優しい奥さんなので、彼への言葉もつい厳しめになります。
「お前の身体を心配してくれてんだろ!?味が合わないなら奥さんに正直に言ってみろよ!」
「毎日、早起きして時間かけて作ってくれるのに、言えるわけないっすよ」
筆者の言葉を受けて、子供のような拗ねた顔になって彼も言い返してきます。
「弁当を渡される時に『お仕事頑張ってね』と笑顔で見送ってくれるんすよ?先輩なら言えるんすか?『マズいから揚げ物にしてくれ』って?」
「俺も作ってもらって悪いから1口2口は食べて『美味しかった』って嫁にちゃんと言ってるんすよ」
(うっ、なんだコイツ…)
筆者は離婚している身なので、「夫婦とは…」なんて偉そうなことは言えません。
筆者が言葉に詰まっているのを確認して、彼は会社の外にあるコンビニに向かいました。
彼の名誉のために断っておきますが、彼はちょっとお調子者ではありますが仕事は一生懸命ですし根は良いやつです。
年上の同僚や女性職員にもよくかわいがられているような人間なんです。
筆者は実家が農家なので、子供の頃から生産者側の苦労を見て育ってきました。
大人になっても出された食事を残したことはありません。
それだけに今回の事は筆者にすれば”事件”でした。
彼のやり方は奥さんへの礼儀も考えての苦肉の策なのでしょうが、この事実が奥さんにバレた時に二人の関係がどうなってしまうのか?
幸せになるハズだった夫婦の関係が壊れていく過程を自ら経験してきただけに、自分のことのように不安で仕方がありません。
今後の彼の幸せを願わずにはいられないのです。
ひとまず、今回見たことは筆者の中だけにしまっておくことにしました。