私たち夫婦は結婚して10年以上が経ちます。
結婚した当初は交際中の名残りもあって、一緒に歩くときは自然に手を繋いでいました。
その頃は、お互いが相手への思いやりの気持ちもありました。
「自分より相手のこと」
を実践できていたと思うのです。
それがいつの日か分かりませんが、年月が過ぎるとお互いに気遣い出来なくなっていきました。
夫婦間の会話も大幅に減っていくのと並行して、2人の関係も冷え込んでいったのです。
そうなると手を繋ぐこともなくなりました。
《手を繋ぐ》というのは、その時の素直な感情で、頭よりも先に体が自然に反応する行為なのでしょう。
「さあ、手を繋ごう!」
と意気込んでするものではないのかもしれません。
2人の関係がうまくいっていれば、お互いが意識しなくても手は自然と繋がれるといった所でしょうか。
妻と仲の良かった頃を思い出しながら、そんなことを漠然と考えていたある日の夜、無性に寂しい気持ちになりました。
私たち夫婦は最初から仲が悪かったわけではありません。
今日1日あったことをお互いに報告しあったり、楽しい事があれば2人で笑いあったりしたのです。
「また以前のような夫婦関係に戻りたい」
寂しい気持ちが日に日に大きくなってくると、
“以前のような関係に戻りたい”
と強く考えるようになりました。
“妻と手を繋がなくなってどのくらい経つだろう?”
“最後に妻と横に並んで歩いた日はいつだったろう?”
そう考えると悲しくて仕方がありません。
ある日、二人で出掛けた時に思い切って行動にうつしました。
妻の横に並んで歩いたのです。
怪訝そうな顔をした妻でしたが、逃げることはしませんでした。
第一関門を突破しました。
緊張して額に汗がにじみます。
そのまましばらく並んで歩きながら、勇気を出して妻の手を握ろうとしました。
妻は慌てて手を引っ込めました。
あっけなく玉砕です…
考えてみれば当たり前です。
今まで歩み寄ることをしてこなかったのに、急に手を繋ごうなんて虫が良すぎます。
妻も
「気持ち悪い!?」
と感じたことでしょう。
それでも横に並んで歩いてくれたので、自分はまだ徹底的に嫌われているワケではない…
と仮説を立てて、その後も何度か妻の手を握ろうと試みましたが、結果は全て失敗に終わりました。
他の要求をせず、ただ手を握ろうとしている私の心情を察したのか分かりませんが
「まずは話し合うことが先でしょ?」
ある日、妻からそう言われたのです。
もともと私たち夫婦の関係が悪くなったのは原因があります。
家庭内で起きた様々なトラブルに対して、2人で話し合って解決してこなかったからです。
「2人で..」というより私の問題です。
妻は話し合う気持ちはあったと思います。
私が色んなことが重なって嫌気がさしてしまい、妻から何を言われても無気力な人間になっていたのです。
私自身も今までの自分を乗り越えたかった…
そして、そのためには妻に私の隣にいて欲しかったのです。
2人の関係が上手くいっていれば、難しく考える必要も無かったハズなのに、関係が1度冷めてしまうと簡単にはいきません。
その後、1人で色んなことを考えました。
今までは目の前の問題から逃げてきた私でも、今回ばかりは絶対に諦めたくない。
この時、妻から手を繋ぐことを拒否されたのは、逆に前向きに考えるようにしたのです。
手を繋ぐ事が出来たとき、きっと夫婦仲が回復している!
そう思うようにしました。
当時、私の大きな目標は、妻と手を繋いで歩くことにしました。
《手を繋ぐ》ために最初にやったのは会話
最初に取りかかったのは、会話を増やすことでしたが、最初はかなりぎこちなかったと思います。
モゴモゴ籠もったような話し方になったり嫌な間ができたりして、私が話しかけても妻から返事をされないこともありました。
それでも声を掛け続けると、妻が返事をくれたり会話になる話題や話しかけるタイミングが分かるようになっていきました。
言葉にすると短く聞えますが、ここまで到達するのに約2ヶ月くらいかかっています。
その間、毎日話しかけていました。
妻と会話していたある日のこと
妻の笑顔が多いかな?
そう感じた日がありました。
いつものように二人で買い物に出掛けた時です。
良い雰囲気だったので、「今日はイケるかも!?」という期待がありました。
それとなく妻の方を見ると、話をしない時でもうっすら微笑んでいる気がしたんです。
ドキドキしながらゆっくりと妻の手に触れると…拒否されません!
さらに、妻の手を握ると妻も握り返してくれたのです!(やった~!!)
時間にして数十秒ほど、駐車場から店内に入るまでの僅かな時間でした。
それでもこんなに幸せで胸がドキドキしたのは、妻にプロポーズした時以来だと思います。
その後も出掛ける度に手を繋げ…たら良かったのですが、現実は甘くありませんでした。
私たち夫婦には、経済問題を筆頭に抱えている課題が多く残されているのです。
買い物を終えると妻の表情は平常時に戻っていましたし、この日以降、手を繋いでくれたことはありません。
この日の出来事は、2人で協力しながら共通の問題に向き合っていこうという妻なりのサインだったのかもしれません。
これらの問題を二人で乗り越えていった時に、この日の続きができると信じて日々過ごしています。