妻とは30歳になる直前に恋愛結婚しました。
知り合って半年での結婚で、私は付き合ってすぐに「この人と一緒に生きていきたい」と強く感じて求婚したのです。
妻は当時から明るくて優しくて、相手が嫌がるような事は絶対に言わない人です。
そんな妻の様子が1度だけ大きく変わったことがありました。
それは妻が40代半ばの頃でした。
急にやってきた《更年期障害》の兆候
妻の様子がおかしいと最初に感じたのは、妻と二人で散歩をしていた時でした。
ついさっきまで談笑していたのに、急に妻が無口になったのです。
体調でも悪いのかと思って、声をかけたのですが何を言っても一切返事をしません。
(会話中で気分を害するようなことを言ったのだろうか?)
そう思って私が理由を訊いても、返事すらしてくれないのです。
鈍感な私でも女性はホルモンのバランスが崩れた際に、心や体に変調が起こること程度の話は知っていました。
年齢的に『更年期障害』の可能性を疑い、妻を刺激しないよう言動に気を付けながら様子を見ることにしたのです。
しかし、その後も一向に妻の様子は改善しませんでした。
いつも優しかった妻から無視され、話しかけても見向きもされないことは想像していた以上に苦しいものでした。
ある時、仕事のストレスも重なっていた私がとうとう妻の態度に我慢できなくなり、感情のまま怒ってしまいました。
その私が怒った様子を見て妻は涙をこぼしたのです。
「しまった…」
そう思った時には後の祭り…妻は反論することなく、そのまま家を出て行ってしまいました。
私は自分のとってしまった態度を後悔しながら、妻の後ろ姿を呆然と見送るしかできませんでした。
その日、妻は帰ってきませんでした。
(後で本人に聞いた話によると、そのまま実家に帰っていたようです)
今まで経験したことのない状況に、どうしたら良いのか一晩中、考えましたが答えが出ないまま朝を迎えました。
妻は翌日、家に戻ってきました。
言いたいことや聴きたい事があり過ぎて、言葉にならない私の横を妻は「ただいま」と言って自分の部屋に入って行きました。
妻の感情の起伏に翻弄される夫
その翌日、妻の態度が急に変わりました。
私が仕事から帰ってくると、上機嫌でずっとニコニコしながら私に話しかけてくるのです。
「機嫌が直ったのかな?良かった」
その時は思ったのですが
その数日後には、私がいくら話しかけても一言も発せず、完全に私を無視する日にまた戻ったのです。
(更年期かもしれないし、自分では感情をコントロールできない状況なのだろう)
そう考えるようにはしてましたが、妻の変化の周期が段々と短くなっていき、1日の中でもコロコロと変わる妻の態度に私も心が折れてしまいました。
感情の起伏が激しすぎてついて行けず、まともに向かい合っていると私もどうにかなってしまいそうに感じたのです。
「何か自分にできることはないか?」
何か手がかりが欲しくて色々と話しかけるのですが妻は全く反応すらしてくれません。
そんな日々がしばらく続いた日の朝、とうとう私は妻に離婚を切り出しました。
その時、妻は自分の今の状況について初めて話してくれました。
妻の話では少しでも暗い話題を聞くと、それだけで感情が溢れてきそうになり泣き叫びたくなる衝動を必死にこらえていたんだそうです。
自分でも感情をコントロールできなくなり、どうして良いか分からなかったとのこと。
自分が置かれている状況を私に話そうと何度も思ったそうですが、私の反応を想像するだけで気持ちが張り裂けそうになったそうです。
《更年期障害》と夫婦で向かい合った日々
その言葉を受けて、私は間近で見ていた印象を妻にありのまま伝えました。
「更年期障害」という言葉をこの時、妻に初めて使いました。
それを聞いた妻のリアクションが心配でしたが、妻は取り乱すこともなく、むしろ、少しホッとしているような表情にさえ見えました。
「そうかもしれない」
と口にしたのです。
妻がこの状況を夫婦二人で乗り切ることに賛成してくれたので、今後の対処法についてゆっくり話し合いました。
私から話したのは
・「もし更年期障害なら誰が悪い訳でもない」
・「病気のせいなのだから仕方がない」
・「医者に行って、治療が必要なら薬をもらうなり判断を仰ごう」
という内容でした。
妻が病院に行くことに抵抗が強かったので、ひとまずはネットで解決に繋がる情報を探しそれをお互いが心がけるようにしました。
この時の話し合いで妻も心の中で苦しんでいたことが分かりました。
私を拒否していたつもりはないという言葉を妻の口から聞いて、私も二人でこの問題に向き合う覚悟を決めました。
そして、『更年期障害』は年齢的なものなので
「今の状況がずっと続くわけではない」
という情報が私たちの気持ちのより所になりました。
そして「妻が良くなるまでは明るい話題だけを話す」というルールを決めたのです。
今まで私は、会社の話になるとつい愚痴を言ってしまっていたので、話をする前に「何を話すか?!」ふるいにかけるようにしました。
例えば台風の話や政治の話など、妻がマイナスの気持ちになる可能性がある話題は全て避けました。
この効果は絶大でした。
この間、妻は理性的でいようと目に見えない相手と戦っていました。
その努力が報われて、妻は元の明るく元気な態度を取り戻していきました。
今では二人の関係は完全に良い頃に戻ってきたように思います。
私たち夫婦が初めて経験した離婚の危機は、こうして乗り越えられたのです。
この経験があってから更年期障害について更に調べたり、周りの友人に聞いたりしました。
表に出る症状は人それぞれで、中には「私は全くなかったよ」と言う人もいたりして驚きました。
なんにせよ、夫婦でこの危機を乗り越えられてホッとしています。
今後も大変なことがあるかもしれませんが、この時二人で乗り越えた経験は無駄にならないと思います。
お互いが年をとって過去を振り返った時に、「あの時は大変だったね」と笑って話せるような関係になりたいと思います。