私は40代の既婚女性です。
皆さんは「子供の習い事」を決める際に、子供の意思を尊重していますか?
私は「自分が苦手だったこと」を子供に習わせています。
これが子供にとって、“悪いことかもしれない”と感じる時もあるのですが、いまだに止められずにいます。
今回の記事ではそういった疑問も含めて、《子供の習い事》について取り上げてみたいと思います。
音楽が苦手だった母は私に音楽を習わせた
私が幼稚園の頃、姉と2人で“ヤマハ音楽教室”に通っていました。
姉妹で音楽教室に通っていたのは、私たちが希望したからではありません。
私の母の想いがそこには深く関与していました。
というのも、母の学生時代は、部活動の過酷な練習に毎日汗を流していた体育会系女子だったのです。
芸術的センスがなかったと母としては、絵画や音楽といった芸術の世界に早くから私たちを触れさせて、その感性を磨かせたかったようです。
そんな母の想いを知らない私たちにとって、興味もない音楽教室に通うことは“退屈で達成感のない”時間でした。
当時、10人位のグループレッスンが主流でしたが、最後に必ず『サヨナラの歌』というのを皆で歌うのが定番でした。
そこでは指揮者は当番制だったので、必ず生徒全員に指揮者の順番が回って来るというルールでした。
次は私が『指揮者』をすると聞いた母親は、急に目つきが変わって気合いが入ってたのを覚えています。
当時、たまにテレビで放映していたオーケストラを指揮している指揮者をイメージしたらしいのです。
娘の“晴れ舞台”がやってくる!!
と勝手に妄想した母は、長らく使う場面のなかった体育会系のメンタルを発揮して毎日、夕食後から2時間、指揮者の練習を私にやらせたのです。
“練習”といっても、三拍子の曲に合わせて顔の前で三角形に手を動かすだけなのです。
「さよなら~、さよなら~…」みたいな曲なのですがずっとテンポを保って三角形に顔の前で指一本出して腕を動かし続ける練習です。
音楽センスのない母親が指揮者の指導をすること自体、おかしい話なのですが、当時は親の言うことには逆らえません。
母の歌に合わせて、ひたすら三角形に指を動かします。
曲の見所を作ったり抑揚をつけたり…
そういった専門的な知識がない母の指導は
「腕の振り方にキレがない!」
「疲れを顔に出すな!」
といった内容に終始していましたが、指導は厳しくて怒鳴られることも度々ありました。
そんな気合いが入りまくっていた母でしたから、私が指揮者の日は当然、見に来ました。
父兄用に披露する「演奏会」ではなく、演習日の1日でしかないのですが、母にとっては“本番”です。
当日は練習の成果をしっかり出せるか、母が凄い形相で睨んでいる…
そんな記憶しかありません。
先生も持ち回りでやらせる指揮者を重要視するわけもなく
「あの鬼のような練習は何か意味があったのか?」
とつくづく思ってしまいます。
テニスが苦手だった私が子供にテニスを習わせた
幼い頃にそんな体験をしている私ですが
「やっぱり私も母の子だな…。」
と最近、感じます。
私の息子に同じ様なことをしているからです。
私の学生時代は吹奏楽部が中心だったので、スポーツ全般が苦手でした。
特に球技なんて最悪で、大学時代で青春を取り戻そうとテニスのサークルに入ったものの、ラケットを振ってもまともにボールに当たりませんでした。
そんな理由から、息子には3歳からテニスを習わせたのです。
“自分が苦手な事を子供にやらせる”
いつの時代も親って変わらないものなのでしょうか?
3歳の時はテニスとは全く無縁な「ボールのお遊び」という印象でしかありませんでしたが、それでも月謝は1万円以上。
息子自身はまあまあ楽しんで通っていました。
それが、ようやくラケットを手に取ってテニスの真似事のようなことが始まったかと思ったらまあ大変でした。
今まで1度も拒否などしたことがなかったのに、行くのを嫌がるようになったのです。
スクールまで行ってもコートに入る時になって途端にギャーギャー鳴き始め、諦めてそのまま帰ったこともあります。
「今日はコートに入ってくれた」
そう思っても、ラケットを持って追いかけっこを始めたりして、コーチに怒られてまたギャーギャー泣くなど、大騒ぎです。
そんな息子も年長になった頃から、ようやくテニスらしいことが出来るようになってきて、試合形式の練習にも参加するようになりました。
そうなると親の欲が出てきて「もっと上手になって欲しい」と考え、自宅の庭でできる高価な練習道具を購入したのです。
固定したボールを打つ道具でしたが、約3万円したと思います。
買った翌日から息子に特訓させています。
子供の意思を聞かずに「習い事」をさせるのは正解?不正解?
自分が一番苦手だったテニスを自分の息子に強いて、勝手に練習道具を買って家でまで練習させる…
「こんな光景どこかで見たような…」
ある日、ふと考えてみた時に、私の母親がしていた事とまったく同じことをしていることに気付いたのです。
自分も母親と結局、同じことをしてしまっている。
そう気付いてからも、修正ができません。
分かっていても止められないのは、当時の母親も一緒だったかもしれません。
私の息子もかなり特訓に嫌がっていますが、私は当時の母の様に無我夢中で強要してやらせています。
自分も体験しているのに…この特訓の効果も怪しいものです。
息子は毎日、私に言われた通り特訓してますが、試合にもあまり勝てないしテニスが上手くなっている様にも見えません。
きっと息子もやっていて楽しくないでしょう。
それでも「特訓を止めよう」「テニス止めても良いよ」と言えない自分がいます。
息子が将来、人の親になった時、自分の子供に同じことをしてしまうかも…
と考えながらも、息子には「今日もやるよ!」と言ってしまうのです。