ラグビーワールドカップ

『ベスト8』より価値あるものは台風被害を悼む日本代表の心【ラグビーW杯】

去る10/20に念願のベスト8進出を果たした日本代表の準々決勝が行われました。

相手は因縁の相手南アフリカ、結果は残念ながら3ー26という日本の敗退という結果になりました。

簡単にその試合を振り返りたいと思います。

開始早々、田村選手のキックパスに「違和感」

私は勝機はあると思っていましたが、試合開始直後に勝つのは難しいかな…と直感的に感じました。

まず開始早々に田村選手が自陣でキックパスを試みます。

そのプレーに違和感がありました。

相手陣地に攻め込んでからのプレーではなかったからです。

「こんなに早い時間帯にこの位置からなぜ?」

そのキックパスが通ったかどうかが問題ではなく、そのタイミングでのトリッキーな展開を必要とした理由を考えてみたのです。

通れば陣地を回復?

しかし得点までは程遠いエリアです。

もしミスしたら、すぐトライにつながってしまうリスクもある…

焦る時間帯ではないのにその選択肢は私にはどうにも理解できなかったのです。

あくまで想像ですが。

おそらく日本は相手に対して「キックを多用していくよ」と意思表示することで、ディフェンスを撹乱したい目的があったのでは?と考えました。

裏を返せば「フォワードで優位に立てないかもしれないという」危惧から攻撃範囲を拡げたいという意味合いだったのかなと。

田村選手のキックは瞬時の閃きではなく、試合前からある程度用意していたプレーだと思います。

「まともに勝負したら不利」

と考えたかのようなプレーに見えました。

そこに焦りと違和感があると感じたわけです。

注目のウイング対決で勝利したのは南アフリカ

最初のトライは南アフリカのマピンピ選手でしたが、やはり警戒していたウィングの得点です。

試合の焦点はマピンピ&コルビ対松島&福岡のウィング対決でしたが、開始4分で出鼻をくじかれた格好で先取点を許しました。

結果的にはマピンピ選手2本のトライで、コルビ選手にはほとんどパスは回りませんでした。

対する日本のウィングは不発…完全に抑え込まれましたね。

日本を「3点」に押さえ込んだ南アフリカの強いディフェンス

日本のどの攻撃に対しても、南アフリカのディフェンスは早くて強いアタックで潰しにかかって来ました。

日本の唯一の得点シーンは前半20分の田村選手のペナルティゴールでした。

なんとか3点とりましたが、相手チームが1人少ない(シンビン)時間帯でしたね。

3ー5の大接戦、本来ならこれでいけると思える得点差で多くのファンは期待が膨らんだと思います。

しかし私は逆だと思いました。

完全に相手の術中に嵌っている。。。

そう思ったのです。

ボール支配率が高いのに突破できない日本

前半どのタイミングだったか忘れましたが、日本のボール支配率が8割近くになっていました。

本来なら「ボール支配率」は高いほど良いとされます。

TVの実況でも肯定的でしたが、この試合に関しては少し違う気がします。

これが意味することは…

「支配できているのに突破できない」

つまり、相手にボールを支配させられているということです。

ハイパントを巧みに処理していたように見えた日本、しかしそれは敢えて相手にボールをキープさせる南アフリカの戦術だったのかもしれません。

「ボールを支配している側が攻める」

それにより走らされてしまうということになります。

よく「ディフェンスは耐えるのに体力を消耗する」と言われますが、攻める側はもっと走る必要があるわけです。

ボールを持たせることでむしろディフェンスに集中できた、それが南アフリカのプランだったのではないかと感じます。

この展開は後半に大きな影響を及ぼし、先に体力を消耗してしまったのは日本の方でした。

本来なら、日本が南アフリカに対してやりたいプランだった気がします。

スピードを失い南アフリカのペースのまま敗北

後半開始から先に南アフリカに得点が入りました。

前半のアタック不発からか、日本は武器であるスピード感を失いつつあるように映りました。

心配していたラインアウトも後手に回りモールも止められない、リザーブの交代のタイミングも全て遅れ気味でしたね。

あとは見ての通り、終始南アフリカのペースのまま試合終了でした。

この試合だけを観ると、やはり日本はまだトップクラスと対等に戦うには時間が掛かると思います。

しかし、格上の南アフリカに「勝つか負けるか!?」という勝負ができたのは、日本が強くなった証拠でもあります。

負けても日本代表の真摯な態度は賞賛されるべき

ここまで日本が強くなったのは長い道のりだったと思います。

対ロシア戦でホスト国のプレッシャーを跳ね除け勝利!

強豪アイルランドを粘り強さで逆転し勝利!

サモアのフィジカルに屈せず勝利!

そして本気で日本を潰しに来たスコットランドに完敗を認めさせて勝利!

勝つだけでなく、堂々たる戦いぶりで勝ち上がってきました。

観る人によっては、「日本は8強進出を果たして満足してしまったのでは?」

との声も囁かれました。

もしかしたらそれも間違いではないかも…と思いますが、私はそれでも日本は気持ちをリセットして挑んできたと思っています。

大会中大きな台風で各地に被害を及ぼしました。

日本代表の面々を見て、彼らはこの台風でもう一つ大きな使命感を感じたと想像します。

自分たちの成績よりも大きなテーマがそこにあるのだと。

スコットランド戦後のトンプソンルーク選手の言葉が今でも強く印象に残っています。

「ラグビーはちっちゃいこと」

台風で被災した方達にむけて激励のメッセージの途中で出た言葉ですが、私はこういう選手が代表でよかったなと誇りに思えた瞬間でした。

コーチや控えのメンバーを含めて、彼らはまるで兄弟のようでした。

トンプソン選手やリーチ主将が、

「ここはオレがなんとかするからおまえたちはもっと前に進め!」

そんなことを背中で言っているような。。。

勝ち抜くまで毎試合、いい場面がある度に泣けてきた私はなぜか南アフリカ戦では涙は出ませんでした。

残ったのは寂しさだけ。

順位に関係なく、このチームの試合をもう少しだけ観ていたいという願望だけが残りました。

試合後の彼らを見ていて、やっと大きな緊張から解放されたんだなと思える表情がそこにあったような気がします。

優しい力持ちの面々、傷だらけのヒーローたちに私たちファンは何をしてあげられるのだろう…

新しい課題がまた一つ生まれた気がします。