私には中学3年生の息子がいます。
私に似たせいか、のんびりとした性格であり人と争うことを好まない優しい子です。
そんな息子は小学1年生から剣道を習っていますが、向上心や競争心が今一つ足りないせいか、勝ったり負けたりを繰り返していました。
本人はあくまでもレクリエーションといった感じで、剣道を楽しんでいました。
そんな息子が1年前から人が変わったように剣道に打ち込むようになりました。
きっかけは初恋の人の前で、相手に惨敗したことです。
部活の練習試合でしたが隣の中学校の選手に、手も足も出せず完敗してしまったのです。
相手はとても強く、何度も大会で優勝している実力なので無理はないのですが、瞬殺と言って良い負けっぷりでした。
その試合を同じ体育館で部活をやっていた女の子が見ていたそうです。
息子はよほど悔しかったらしく、その日から息子は変わりました。
親である私でさえ驚くような変りようです。
【息子の自主訓練メニュー】
・朝5時に起きて5kmのランニング
・素振り500本
・部活を終えて帰宅した後も500本の素振り
を日課とし、毎日こなすようになったのです。
部活や道場での練習も、それまでとは比べ物にならないくらいの情熱を持って取り組み、メキメキ強くなりました。
剣道に打ち込む息子に、私は熱いものを感じていました。
好きな女の子のために、それまでの生き方を自ら改めて頑張る息子の姿に感慨深いものがありました。
そして今年5月に行われた市民大会で、リベンジの機会がやってきました。
準々決勝で、以前に完敗した選手と対戦することになったのです。
試合が始まると、前回とは違い、一進一退の良い勝負になりました。
息子が相手を怯ませるような一撃を繰り出して、相手を追い込む場面もありました。
しかい、勝負事は甘くありません。
お互い一本ずつを取り合い迎えた延長戦で、相手の小手が決まり息子は負けてしまいました。
相手の勝利を審判が告げる中、私は息子が1人で黙々と鍛錬していた1年間を思い出していました。
1度負けた相手に勝つためだけに、寒い日も暑い日も1日も休むことなく頑張っていたのに何とか今日だけは息子に勝たせてやりたかった…
そんな事を考えていると、どんどん涙が溢れてきて止まりませんでした。
隣にいた妻も、息子の頑張りを見ていた他の父兄もみんな泣いていました。
事情を知らない人も、必死になって相手に立ち向かう姿に何かを感じたのかもしれません。
息子はさぞかし悔しいだろうと思っていましたが、やりきった気持ちの方が大きいのか、大人たちとは違ってサバサバした様子でした。
その後、負けた息子のもとに対戦相手が歩みより、お互い健闘を称え合っていました。
その姿を見た私は、何がなんだか分からないくらいに気持ちが高ぶってしまい、更に号泣しました。
高校野球や青春ものの映画で感動して泣くことはありましたが、まさか自分の息子の頑張る姿を見て泣くことはになるとは想像していませんでした。
試合に完敗してから一番近い場所で息子をずっと見てきたので、完成度の高いドラマを観ているかのような、何とも言えない感情でした。
息子にとって過去の敗戦は、人間的に成長できた良い機会でした。
これからの息子が何を見てどう行動していくのか?
自分の息子ながら楽しみですし、そんな事を考えているとまた目頭が熱くなってしまいます。