夏は海や川など楽しい水遊びをする機会が増えますが、一方で毎年悲しい水難事故が後を絶ちません。
過去の水難事故を検証すると分かる通り、多くの泳げるはずの人が溺れて亡くなっています。
なぜでしょうか?
理由の1つは、波や流れのある海や川では、プールと同じようには泳げないからです。
海では自分の身長の倍以上にもなる高波がいつ発生するか予測ができません。
また天候の変化や大きな船の通過など、沖合で起きたことがそれまで穏やかだった周囲の状況を一変させます。
いくら水泳選手でも強い流れに逆らって泳ぐのは困難です。
また、どんなに体力のある人でもずっと泳ぎ続けることはできません。
海や川で溺れそうになって窮地に追い込まれたときに、頼りになるのは泳ぐ技術ではありません。
様々な周囲の変化を想定し、過去の水難事故から検証を重ねてきた「救助法」こそが効果を発揮します。
これからご紹介する救助法は消費者庁や海上保安庁でも推奨している方法で、現段階で考えられる中で最も生還率が高い救助法です。
その名も「浮いて待て!」です。
8/10放送の【めざましどようび】でも取り上げられました!
目次
海や川で溺れないための基本的なルール
まず大前提として、海や川で水遊びをする際の基本的なルールがあります。
下の2つは、基本的なことではありますが、水難事故を防ぐにはとても大事なことです。
特にお子さんには繰り返し説明しましょう。
・足の届かない場所には行かない。
・ライフジャケットを着用する。
当たり前に聞えるかもしれませんが、守られていないケースがまだ多いです。
『ライフジャケット』の購入費用は効果を考えたらお手頃な価格だと感じますが、普及率はいまだ高いとは言えません。
溺れそうになった人が生還するための対処法「浮いて待て!」
ここから先の話は、『ライフジャケットを着てなかった』『足の届かない場所に流されてしまった』
この2つが重なってしまった時に、無事に生還するための対処法です。
体力自慢で泳ぎが得意だから、「泳げば助かる」と思っていた人もいると思います。
実際は水難事故が起きた時の生還率は中学生以下が80%であるのに対して、なんと中高生以上は50%以下!というデーターがあります。
その理由は、子供は学校などで救助法を指導される機会が大人よりも多い点にあります。
発見者が通報してから実際に救助隊が来るまで8分間と言われています。
そして流されてしまった時の助かる最善策は、漂流したまま体力の消耗を避け、助けを待つことです。
つまり、「浮いて待て!」です。
人は空気を吸い込むと、真水でも身体全体の2%が水から浮くようになっている。つまり、「背浮き」をすることで顔の表面を水から出せて口や鼻で呼吸ができるため体力を温存しながら救助を待てる。
~「浮いて待て!」のやり方~
①服や靴は身につけたまま、仰向けで両手両足を大の字に広げる。こうすることで身体全体のバランスがとれて浮きやすくなる。
②大きく息を吸って空気を肺に溜める。
③顎を上げて上を見る(呼吸がしやすくなる)。
溺れそうな時にやってはいけないNG行為はコレ!
手を上げて助けを求めるのは危険!
ついやってしまいがちですが、人の身体は2%(川の場合)しか水から浮きません。
手を水から出して助けを求めることで、身体の他の部分が水に沈んでしまいます。
つまり顔は沈んでしまい、呼吸ができなくなってしまいます。
伸ばした手をすぐに誰かが見つけてくれる保証もないので、かなりリスキーな手段と言えます。
よってNG行為です。
大声を出して助けを呼ぶのは危険!
実際、溺れそうな時に冷静になるのは容易ではありません。
早く見つけて欲しいあまりについ、「助けて!」と大声で叫びたくなります。
ですが、これも危険な行為です。
海で泳ぎ疲れてしまい、声を出して友人に助けを求めた直後、さらに身体が沈んでいくので「溺れる!?」と恐怖に駆られた。幸い、近くにいた方に救助して頂く。
声と一緒に肺中の空気が外に出てしまうので、浮力を失いあっという間に身体が沈んでいきます(体験済み)。
筆者の場合、水を飲んでしまって更にパニックになりました。
よってNG行為です。
水面から顔を出して息を吸おうとするのは危険!
ここでも、2%しか身体を水面に出せないという現実が立ち塞がります。
息を吸おうとする態勢は身体の向きが縦になるので、頭のてっぺんしか水から出せません。
つまり、手足をバタバタさせながら息をすることになり、体力を大きく消耗して救助隊が来るまで体力がもちません。
よって、これもNG行為になります。
溺れている人を助ける方法
溺れている人を見つけた場合、「慌てるな!」といってもムリでしょうが、これだけは覚えておきましょう。
・まずは119番通報。
・「浮いて待て!」と声をかける。
・多くの人に溺れていることを知らせる。
・ペットボトルやリュック、ゴミ袋など浮具になる物を投げ入れる。
見失わないように溺れている人から目を離さず、さらに声を掛け続けます。
溺れてる人は浮くことに精一杯なので、周りの状況が分からず孤独と不安を感じているはずです。
そんな中、周りの人の声が届けば心の支えになり、落ち着きを取り戻します。
「もう少し頑張れ!」「もうすぐで助けが来るぞ!」などの励ましは非常に勇気を与えることでしょう。
溺れている人が周りの声で落ち着きを取り戻せば、身体から無駄な力が抜けて身体が浮きやすくなるという点も見逃せません。
ペットボトルやリュックなど浮具になる物があれば投げ入れることが推奨されています。
その際の注意点は下の通りです。
・ペットボトルの場合:少し水を入れて蓋をよく閉めてから投げる。
・クーラーボックスの場合:蓋をしっかり閉めて投げる。
・一声かける:「これから投げるよ」と声を掛けて気付いてもらう。
・投げ方:下手投げで、溺れてる人に当たらないように投げる。
効果を高めるためには、日頃から何が浮力体になるか知っておくと良いと思います。
カバンやリュックなど身につけている物の何が浮力体として使えるか知っておきましょう。
何を投げれば良いかが瞬時に判断できますし、また事故を想定して浮力体で使えそうな物を帯同することも増えると思います。
「浮いて待て!」を実行して命が助かった人がいる
2011年に起きた東日本大震災の時です。
津波の被害を受けた当時の小学生が、授業で毎年習っていた「背浮き」を咄嗟に思い出して実行したことで命が助かったことが以前のニュースで取り上げられました。
このニュースは、救助法「浮いて待て!」の有効性をあらためて証明したことになります。
有効な対策はいくつやっても良い
今回は《海や川で溺れそうになった時の救助法》をご紹介しました。
「浮いて待つ!」は溺れそうになった際に有効な対処法ではありますが、より効果を発揮するのは海や流れのないため池などの「静水域」になります。
特に川では、水の流れが複雑であり、また急に深さが変わる場所があるので「浮いて待て!」の有効性は海より低くなります。
どの方法も『絶対安心』ということはないので、「危険な場所には近づかない」「子供から目を離さない」「ライフジャケットの着用」など考えられる予防策はとって下さいね。
また、ご家庭で「浮いて待て」のやり方をお子さんと確認しておくのも大切な事だと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。