こんにちは。介護老人保健施設ではたらく現役相談員(社会福祉士)のぷ~すけです。
老人施設では医師、看護師、理学療法士や、柔道整復師、介護支援専門員、介護福祉士、管理栄養士など多くの職種の人間が働いています。
その中で世間的に注目度が高いのは、やはり【介護士】ではないでしょうか?
「介護施設に勤めています」と言うと「介護さん?大変ね~」と応援とも同情ともとれる言葉を掛けてもらえます。
他の仕事に比べて【介護士】がハードワークで「大変な仕事」という認識をもっている方が多いと思います。
【介護士】は本当に大変な仕事?
介護士に対してよく頂く質問を【介護士】の実情や現在抱えている問題など絡めながらご紹介していこうと思います。
筆者は現役の相談員(社会福祉士)ですが、自分の主観に偏らないように職場の同僚や同業者の友人に確認した情報をお届けします。
介護の仕事「オムツ交換は大変?」
日常生活全ての場面に関わりますので、【介護士】の仕事内容は多岐にわたります。
その中でも、最もイメージしやすい業務は「オムツ交換」ではないでしょうか?
「汚いし臭いし人の下の世話なんて私ならとっても無理」
とお客様から言われることも多い「オムツ交換」は、介護が大変な仕事であるというイメージを決定づけているとも言えます。
実際、施設では夜中に数十人のオムツ交換を1人で行ったり、また便で汚れた衣類や布団、シーツの交換も介護士がします。
体力的には【重労働】と言えるのではないでしょうか。
また時間の制約がある中で、寝ている方の睡眠を妨げないように静かに手際良く行う必要があります。
素早く行うには技術が必要です。
オムツのあてる位置が少しでもずれると脇から便が漏れる原因になったり、テープの止め方が悪いとご利用者の下腹部を圧迫してしまいます。
ご利用者には起こされて不機嫌になる方や、お腹を押したりして腹圧をかけないと便が出ない方、ご自分で便をいじって手を汚されている方など色んな方がおられます。
「自分の感情を無にして【作業】と割り切りきってやらないとできない仕事」
と口にする職員もいます。
一方で、オムツかぶれや褥瘡など皮膚トラブルの処置が必要だったり、排便間隔や便の性状によって病気の可能性も視野に入れなければならず、医療・看護的な側面もあります。
さらに「裸を見られている」というご利用者の感情やプライド、尊厳に配慮した対応も常に求められます。
これらを考えると「オムツ交換」の大変さは単純な肉体労働にとどまらず、細かな事にも気付く感性や配慮が必要な仕事という点にあると思います。
介護の仕事『腰痛が持病になる?』
「介護すると腰を痛めるでしょ?」
これもよく聞かれる質問です。
ご利用者のご家族から聞かれた際は
「プロですから大丈夫ですよ」
とお答えしていますが、腰痛はもはや職業病で熟練した技術をもつ介護士でも避けられません。
いくら技術を磨いても相手には感情と人格があり、毎回こちらの思い通りにはいかないのも理由の一つです。
少しでも体が動けば重心が崩れるので、介護者はバランスを保とうと余計な箇所に力を込めてしまいます。
磨いた技術で自分の体への負担を最小限にすることはできても、「ゼロ」にはできないので蓄積した疲労はやはり腰にきます。
長年介護職に就いている人はヘルニアの手術をしたり、手術をしなくても日常生活に支障が出ている人ばかりです。
通院加療やコルセットの装着、腰痛体操など介護士は皆、何らかの対策を当然のようにしていますが【腰痛】は長年の課題であり、介護士の宿命と諦めている職員が多いのが現状です。
中には50代でも現役で介護士をしている人がいますがごく少数です。
彼らは腰痛がひどく立っているのが苦痛だったり、座る椅子のクッションも選ばなければいけないといった状態です。
体を壊すリスクを考えて、介護をしながら他の資格を取り30~40代には介護を離れるというケースも定番になっています。
介護の仕事「給料が安い?」
これには大きく頷くしかありません。
10年以上も介護一筋で勤めた人が、月の手取りが20万円以下なんてザラです。
(筆者も30代後半で手取り14万円を経験しています)
しかも夜勤手当などで安い基本給をカバーしてるので、賞与の額は一般の中小企業と比べて大きく下がります。
政府は「人手不足」を理由に外国人労働者に頼りたいようですが、給与が少ないから人が集まらないのが現実です。
実際、給与面が高めな施設ほど応募者は多いですし、同僚介護士の声を聞いても常に問題に上がるのは経済面、つまり低賃金です。
他の業界で働く仲間と同じような遊び方、お金の使い方をしていたらあっという間に破産です。
「お年寄りが好き」「介護がやりたい」と言って介護士になる人たちも当然います。
賃金より「好きだから」を優先して選んだ仕事でも、結局は貯金ができずに仕事を取るか結婚をとるかで悩んでいる若者たち…。
将来設計を真面目に考えて、給与が少しでも高い業界に転職する人が20年前も今も後を絶ちません。
体と頭を使う仕事だからこそ十分な栄養が必要なのに、休憩時間にカップヌードルをすすっている若者を見ると心が痛みます。
機会があれば介護施設の職員駐車場を見て下さい。
ほとんどが軽自動車のハズです。これが介護士の厳しい懐事情を物語っています。
介護の仕事「いつも多忙?」
「面会に来ても職員はいつもいない」
「いつも忙しそうで声を掛けれない」
ご家族からよく言われます。
施設基準ギリギリで介護士を配置している所がほとんどなので、現場の実情で考えると介護士は「足りてない」状況です。
ナースコールで職員が居室から居室を飛び回ってることも多く、ご家族が面会に来られても足を止めて満足な挨拶ができない事が多々あります。
転倒その他あらゆる事故を防ぐためであり、命に関わるケースも潜んでいるので介護士は余裕のない険しい表情で走り回っています。
施設には寝たきりの方や、認知症の方など多くの高齢者が入所されており、ナースコールが鳴らない時間帯は存在しません。
同じ方が一晩で何十回も鳴らすことも珍しくありませんし、それがいつも同じ要件だったりします。
認知症の方には数分前にご自分で言ったことや、職員から言われたことを忘れるケースも多いです。もちろん病気のせいです。
用事があってナースコールを押したものの、職員が訪室する頃には忘れてしまい
「呼んでないよ」
職員が部屋を離れた直後に同じ方から2回目のナースコール。
3回4回…10回…何度同じことが繰り返されたとしても介護士は
「今度は具合が悪くて助けを求めているのかもしれない」
という気持ちで動かなければいけません。
「ナースコールが聞える夢で飛び起きた」
と話す職員もいましたが、介護士あるあるだと思います。
フロアにもう1人増やせば状況は変わるのですが、人員配置についてはよく話題に上がるものの人件費の問題が大きく、これといった改善点が見いだせないのが現状です。
おわりに
今回は
世間から見た介護士の仕事とは?【4つのよくある質問に答えます】
というテーマでお届けしましたが、いかがだったでしょうか?
20年この業界にいますが、どの職場でも【介護士】は仕事量が多くて、責任も重く大変な仕事だと思います。
ごく一部の職員には仕事の手を抜く人もいますし、周りに他人の悪口を流すような人もいます。
ですが大部分の介護士は、自分が抱えている問題を隠しながら、明るくご利用者に接するように努めています。
実情を知っている人間としては
「素敵なやりがいのある仕事です」と簡単には言えません。
やりがい以上に、体を壊したり生活が困窮している人が多いからです。
もし、介護士の仕事に興味をもっている方がいたら職場選びは
2019年10月の介護報酬改定後の各施設の取り組みを見てから判断されることをオススメします。
今回の記事が、少しでも読んで下さった方の参考になったなら嬉しいです。